5th Conference of Japanese Language Education in Kenya: Report

March 19, 2017

「第5回ケニア日本語教育会議」第1日目を終えて

近藤彩(ケニア・ウタリ・カレッジ)

2017年3月12日から13日までケニヤッタ大学に於いて「第5回ケニア日本語教育会議」が開催された。本年は「第10回日本語弁論大会」の翌日という日程で組まれたことで、連続して両行事に参加する人がほとんどであった。また、日本語教師以外の参加者も今年は多く、様々な視点から意見交換をすることができた。
さらに例年行われる日本語教師によるワークショップのみならず、朗読女優である小口ゆい氏を迎えての「みすゞが見た夢~金子みすゞの詩世界~」という特別ワークショップも行われた。

会議第1日目の概要を感想を交えて述べることとする。

ワークショップ「教科書を比べてみよう~『まるごと』と『みんなの日本語』~」
高橋知也(ケニヤッタ大学、ケニア)

使用教材/教具:
『みんなの日本語 初級Ⅰ』
『まるごと 日本のことばと文化 入門 A1 かつどう』
『Learn Japanese the Easy Wayやさしく学ぶ日本語 ニホンゴ Nihongo』
ポスター紙、マーカー

「ケニア人が知りたいこと」「日本人が教えたいこと」
① 日本事情の中で「ケニア人がどんなことを知りたいのか」、また「日本人がどんなことを教えたいのか」をそれぞれのグループ内で話し合い、一つのテーマを決める
② 選んだテーマが各教科書でどのように取り上げられているのかを比較する
③ 「発表」ができるようにポスターを作成する
④ グループ代表者が「ポスター発表」をする

テーマはほとんどのグループが偶然にも「食べ物」を選んだ。3種類の教科書の中で特に『みんなの日本語』と『まるごと』の比較に焦点があてられ、まとまりやレイアウト(視覚)の違い、例文の数や応用などについて、各グループが違いを述べた。
それぞれのテーマに合わせて参考とする教科書が異なることが明確になったであろう。今後は、「どうして、このテーマにはこの教科書を使用するほうが良いのか」と教材研究を深める必要がある。

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発表「初級日本語教育における現地人教師とネイティブ教師の協働」
新野美奈(アンタナナリヴォ大学、マダガスカル)
JFスタンダードに則り、「4技能」を効率よく指導するために、現地人教師とネイティブ教師で「会話」「文法」「聴解」「作文」の講義を分担する。「技能」によって指導時間の不足が生じた場合には他の「技能」と時間調整を行う。
3年間6学期で修了する日本語の最終レベルはJLPTのN3合格を目指す。
各学年で語学が必須となるため、一期でも不合格となれば留年が即決定。

発表「ハルツーム大学における日本語スピーチ授業の実践と成果」
栗田典和(ハルツーム大学、スーダン)
アラブ世界弁論大会への参加。優勝、準優勝者が共にハルツーム大学の学習者。
スピーチ指導における諸問題として、「教師の手直し」が挙げられる。スクリプトは本来、学習者の既習レベルで書かれるべきものであるが、「難しい言葉」で書いた方が勝てると誤解している学習者もいる。「審査員は言葉の難易度に注目しているわけではない」ということを学習者に伝える必要がある。実際、エジプトで行われた弁論大会では難しい言葉は遣われていなかったということである。
また、スピーチの極意としてコーラスや劇団の練習法が紹介された。

発表「エンブ・テンリ小学校での日本語と文化の進展」
オスカー・ムリティ(テンリ小学校、ケニア)
教育方針は天理教教義による「朝起き/正直/働き」。
学内での日本語学習にとどまらず、ナイロビ日本人学校大運動会への参加、日本訪問という文化交流が行われている。日本訪問前には必ず事前学習を行う。2015年には5名、2016年には15名が日本を訪問している。

発表「ナイロビ日本人学校での日本語教室」
久保田恵子・古閑啓之・渡部理恵(ナイロビ日本人学校、ケニア)
以前は、長期休暇の時期を利用して、毎年2日間実施していた日本語教室を2017年1月から月2回実施するようになった。以前は日本人会邦人の子どもに限り、年齢は日本の小学生から中学生に該当する者のみとしていたが、現在は年齢も国籍も問わない。
一日完結型の授業を行う。低学年には絵本や詩の朗読を中心とし、繰り返される言葉や擬音語擬声語に親しみを持たせる。日本語授業と理科実験あるいは図画工作という組み合わせで「日本の学校体験」も同時にできる。
1月に行われる漢字能力検定にも合格できるよう漢字指導も徹底されている。

特別ワークショップ「みすゞが見た夢~金子みすゞの詩世界~」
小口ゆい(朗読女優)

教材:英語日本語対訳

① 朗読鑑賞
作品ごとに異なる声のトーン及び強弱、身振り手振り、会場空間の利用、歌を交えての披露。日本語と英語の対訳がプロジェクターで映されていたため、参加者全員が作品内容を理解することができた。
小口氏のダイナミックなパフォーマンスは観客である私たちの視覚、聴覚を刺激し、詩に描かれた世界にまさに誘われるようであった。

② 6人ずつのグループに分かれ、指定された金子みすゞの詩を日本語と英語で発表

③ 「黙読」と「声に出して読むこと」との違いを考える
作品に対する感想、理解の度合いが異なることが挙げられる。
「黙読」では、意味内容が理解できても、「感情移入」が付随することは、よほどでない限り見られない。しかし、「声に出して読むこと」は自身が作品をより深く読み込まなければ、聞き手に「何を言わんとしているのか」が伝わらない。ゆえに、「声に出して読むこと」は作者の表現した世界に近づく方法であると言えよう。

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以上が第1日目の会議内容である。
発表内容も多様であり、質疑応答も活発であったため、とても充実した一日であった。
明日の第2日目のプログラムも楽しみである。

「第5回ケニア日本語教育会議」第2日目の報告

高橋知也(ケニヤッタ大学)

会議の2日目は2人のケニア人日本語教師を講師に招き、アフリカの日本語教育現場が直面している問題について議論を深めるワークショップが2本行われた。

ワークショップ「第二言語習得における語彙習得」
Kiruri Gachie(ケニヤッタ大学、ケニア)

教具:ポスター紙、マーカー

冒頭“Without grammar very little can be conveyed. Without vocabulary nothing can be conveyed.”というWilkins(1972)のことばが引用され、語彙習得の大切さが確認された。
5~6人ずつの3つのグループに分かれての活動では、各自の経験を振り返り、語彙学習に何が必要か、学習者として自分が採用してきた方法について、また、そのときの教師の教え方とそれに対する効果判断、また、教師として自分が採用している教え方とそれに対する効果判断について、意見の交換と集約が行われた。
それぞれのグループに日本語ネイティブ教師、ノンネイティブ教師、教師経験のない学習者など様々な立場の参加者が含まれていたため、改めて意識する機会の少ない日頃の学習・教授活動を振り返る貴重な機会となった。

ワークショップ「どうして日本語を勉強するか~アフリカにおける日本語教育のアドボカシー」
Monica Kahumburu(東アフリカ・カトリック大学、ケニア)

教具:ポスター紙、ポストイット、マーカー

ケニアでは学習者数の伸び悩みという問題が日本語教育関係者の間で意識されているが、まず冒頭で各種の統計資料により、全世界における、そして、アフリカ大陸における日本語教育の展開が数値的に示された。グループに分かれてのディスカッションでは、2つの大きな問いに対する答えについて自由に意見を出し合った。
(1)どうすれば学習者にとって日本語がもっと魅力的になるか。
(2)どうすれば日本語学習者数を増やすことができるか。
これらの問いに関しては、個人として取り組んで成果を上げるのは難しい面があるが、ケニアの日本語教育界が直面している問題を打開するためのヒントを得ることのできる機会となり、たいへん有意義であった。

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以上で2日間の会議が終了した。
今回、弁論大会に合わせて会議を実施することも、ケニヤッタ大学で会議を実施することもケニア日本語教師会にとって初めての試みであった。
国外からの参加者(スーダン、マダガスカル)の発表から近隣諸国の現状について理解を深められただけでなく、今まで日本語教師会とあまり接点のなかったナイロビ日本人学校、エンブ・テンリ小学校の活動について、初めて詳しく知る機会となった。また、偶然この時期にケニアを訪問されていた小口ゆい氏に特別ワークショップをお願いできたのもたいへんな幸運であった。
会場のケニヤッタ大学のキャンパスはナイロビの中心部から離れていたものの、大学院ビルの施設は音響や清潔さなど申し分なく、快適な環境で会議に集中することができた。

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